名古屋高等裁判所 昭和45年(ネ)354号 判決 1973年8月14日
控訴人 岐阜商工信用組合
被控訴人 株式会社宮川
主文
原判決を左のとおり変更する。
控訴人と被控訴人との間に昭和三五年一〇月三一日成立した金銭消費貸借契約に基づく被控訴人の債務は元本金三一七万九、七六四円およびこれに対する昭和四〇年一〇月二三日から完済に至るまで金一〇〇円につき一日六銭の割合による遅延損害金を超えては存在しないことを確認する。
被控訴人のその余の請求を棄却する。
訴訟費用は第一、二審を通じてこれを二分し、その一を控訴人、その余を被控訴人の負担とする。
事実
控訴代理人は、「(一)原判決を取消す。(二)被控訴人の請求を棄却する。(三)訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする」との判決を求め、被控訴代理人は、「(一)本件控訴を棄却する。(二)控訴費用は控訴人の負担とする」との判決を求めた。
当事者双方の主張、証拠の提出、援用および認否は、次のとおり附加するほか、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する(ただし、原判決七枚目表六行目の「証人長谷川古」の次に「同松岡正己」を挿入し、同裏二行目の「第一一号証の一ないし二〇」を「第一一号証の一ないし一〇」と訂正する)。
(控訴代理人の陳述)
一、被控訴人主張の請求原因第二項(一)に対する認否を次のとおり改める。すなわち、
被控訴人主張の金銭消費貸借契約の締結(以下本件貸付という)に当たり、訴外宮川松枝所有の建物および訴外村手敏雄所有の田畑につき控訴人のため根抵当権を設定したこと、被控訴人が(1) ないし(11)の合計金三〇五万四、一五〇円を支出したことは認め、訴外宮川松枝所有の土地につき控訴人のため根抵当権を設定したこと、右根抵当権が設定された物件の価額ならびに各保証人の資産および負債について被控訴人の主張するところ、むつみ定期預金が仮装のものであること、右金三〇五万四、一五〇円を控訴人が天引きしたことは否認する。
二、本件貸付に当たり、控訴人が徴した抵当物件および各保証人の資産の当時の価額は次のとおりである。
(一) 訴外宮川松枝が所有していた建物というのは、岐阜市清住町三丁目一一番地所在の木造瓦葺二階建事務所床面積一階六八・二九平方メートル、二階二〇・七二平方メートルおよび付属建物であるが、その価額は金二六万八、〇〇〇円であり、訴外村手敏雄が所有していた田畑というのは愛知県一宮市丹陽町多加木字南畔七一九番畑一反一畝二八歩ほか同町多加木地内の田四筆合計一反二七歩であるが、その価額は合計金五三八万二、〇〇〇円であつた。
(二) 連帯保証人のうち、訴外宮川松枝は前記建物を除いて資産としてあげるべきものは有せず、訴外宮川一雄は無資産無資力であつた。訴外村手敏雄は前記田畑を除き一宮市大和町妙興寺字油田一二番畑一畝一歩ほか油田地内に田畑四筆合計三畝二六歩を所有していたが、その価額は全部で金九三万三、〇〇〇円にすぎなかつた。訴外水野覚久は岐阜県稲葉郡蘇原町伊吹字寺島五二七番宅地六〇八・二六平方メートル、その地上の床面積一三三・八八平方メートルの居宅等ほか伊吹地内の田畑四筆合計二反九畝二七歩、価額合計金一二四万九、七〇〇円および動産価額金二〇万円総計金一四四万九、七〇〇円の資産を有していたものの、訴外水野は、他方で訴外柴崎高治に対し金一三〇万円、訴外菊井政之助に対し金二二万五、〇〇〇円およびこれに対する昭和三五年一〇月二六日以降年六分の割合による金員合計金一五二万五、〇〇〇円以上の債務を負担していたから、訴外水野に本件貸付金を弁済する資力はなかつたことに帰する。また、訴外川瀬松太郎は岐阜県大垣市南若森町字柳海道八五四番一宅地四五二・八九平方メートルほか宅地一筆、同所八四四番地、八五六番地一所在の居宅床面積一階一三六・五二平方メートル、二階九二・五六平方メートルおよび付属建物ならびに南若森町内の田二筆を所有していたが、右宅地建物については、昭和三四年一〇月二二日付で訴外岐阜市信用保証協会に対し物上保証人として金一〇〇万円の債務のため担保権を設定していたうえ、その後右物件全部につき、自己の長男川瀬繁に所有権移転登記を経由している。したがつて、訴外川瀬松太郎の資産は零に等しかつた。
(三) 以上のとおり、本件貸付金債務を担保する抵当物件および保証人の資産は市場性の乏しい農地を主体とするものであり、これらをもつてしては債権保全の目的を達成するには極めて不充分な状況にあつたわけである。なお、金融機関が貸付を行う場合において、貸付額は担保物件の価額の七割以下とするのが常識であり、しかも農地は担保として採らないのが原則である。
三、控訴人は中小企業等協同組合法(以下中協法という)によつて設立され、地方自治体の行政監督下にあつて金融業務を行つているものである。金融業務は受信業務と与信業務とに大別されるが、与信業務のあり方については特に公共的機能の発揮が要請され、需要者の利益を害しない配慮がなされ、その事務処理は、大蔵省による「信用組合基本通達」に基づいて、つねに画一的に行われている。本件についても貸付金の交付および控除金員の処理は適法に行われた。すなわち、
本件貸付は、控訴人と被控訴人間の昭和三五年一〇月三一日付継続的信用取引契約に基づくもの(以下継続的信用取引契約に基づく貸付を信用貸付という)であるが、控訴人において当時信用貸付につき設けていた貸付基準は、「貸付を受ける組合員は、(イ)債務に対する担保として、不動産に抵当権もしくは根抵当権を設定し、また保証人をつけることおよび控訴人に対する一定額の預金(貸付金の二割ないし三割程度の預金)に担保を設定すること、(ロ)債務弁済のために一定額の定期積金(貸付金と返済期間から算出した金額)をすること、(ハ)利息は三か月以内分を前払すること、(ニ)借受金に対する一定割合(債務額の八分ないし一割程度)の出資をすること、(ホ)借入れの際の諸手続費用(公正証書作成料、信用調査のための費用、担保差入証の確定日付作成料、担保権設定のための登記手続費用、担保物件の火災保険料等)を負担すること」というものであり、右貸付基準については被控訴人も承諾していた。
そして、本件貸付に当たり、被控訴人から右貸付基準(イ)の預金として金二〇〇万円の定期預金、(ロ)の定期積金として月掛で期間三年、契約金額金三六〇万円の定期積金、(ニ)による金五〇万円の出資をなす旨ならびに右定期預金の金二〇〇万円、定期積金の掛金の一回分金一〇万円、出資金五〇万円、右貸付基準(ハ)による本件貸付金に対する三か月分の利息金二三万六、二五〇円、(ホ)の借入れにともなう諸手続費用金七万七、九〇〇円のほか本件貸付前に成立していた契約金額金六〇万円および金三六万円の各定期積金の昭和三五年一〇月分の掛金二万五、〇〇〇円および金一万五、〇〇〇円合計金二九五万四、一五〇円を便宜本件貸付金から支払いたい旨申入れがあつたので、控訴人はこれを承諾し、そのとおり処理したものである。
しかして、右出資金五〇万円は本件貸付額金七五〇万円からみて、組合員の組合事業の利用分量に相応すべき出資額として相当なものであり、また定期預金二〇〇万円および定期積金の月掛金一〇万円という金額は、後述の信用組合の特質を別にして、一般金融機関が貸付の場合においてとる通常の取扱例(本件貸付当時は金融がひつ迫していたときであり、都市銀行、市中銀行等においては、大企業や優良企業に対する融資のみに偏り、それ以外の者に対しては、預金の範囲内か、倍額程度しか貸付を行わない状態にあつた)に比しても、同程度かそれ以下であつて、なんら不当なものではなかつた。
なお、金二〇〇万円の定期預金は本件貸付金のみを担保するのではなく、控訴人と被控訴人間の前記継続的信用取引契約に基づく貸付金全部についての担保(根担保)であり、それに基づく被控訴人に対する貸付は本件貸付のほか昭和三六年三月一三日行われた金一六〇万円の貸付がある。
四、むつみ定期預金は割増金付定期預金で、預金者は契約と同時に定期預金債権と抽選権(抽選により所定の利息のほかに(特等金三〇万円以下の賞金を取得できる)を取得するものであり、射幸的性格を有するものであるが、被控訴人は、本件貸付が行われた日に別途控訴人から金四〇〇万円の借入れをなし、射幸心の満足と預金増強運動に協力する趣旨で、これをもつて当時控訴人が取扱つていた「むつみ定期預金」をなしたものである。
なるほど、右のように借入金をもつて預金に充てたため、控訴人、被控訴人間に金四〇〇万円の授受は現実にはなされていないが、被控訴人は右むつみ定期預金をなしたことにより、控訴人に対し金四〇〇万円の預金債権および割増金の抽選権を取得し、その抽選の結果、控訴人から金二万四、〇〇〇円の割増金を受領し、その後右金四〇〇万円の借入債務につき、むつみ定期預金債権をもつて相殺している。この事実に徴すれば、右金四〇〇万円の貸付は現実に金四〇〇万円の授受があつたのと同一の利率を被控訴人に得せしめたものというべきであつて、その全額について有効に消費貸借は成立し、その反面として、金四〇〇万円のむつみ定期預金もまた有効に成立したものである。
五、本件における貸付金と預金の両建は、中協法に基づく信用協同組合である控訴人の特質からして、一般金融機関における場合と異なつた意味合いを帯有する。
(一) 中協法に基づく信用協同組合(以下信用組合という)の特質の一は、信用組合がこれを構成する組合員の相互扶助の精神に基づく組合金融、協同金融、相互金融の団体であるということである。すなわち、信用組合は、銀行などの一般金融機関のように不特定多数の一般大衆を対象として預金を受入れたり、金員を貸付けたりするものではない。信用組合は、国、地方公共団体その他営利を目的としない法人から預金を受入れたり、また組合員と生計を一つにする配偶者その他の親族から預金または定期積金の受入れをすることができるが、主たるものは組合員からの出資金、預金、定期積金の受入れであり、これが組合員に対する貸付金などの主たる資金源となるのである(中協法第一条、第五条第一項第一号、第九条の八、第一五条)。
したがつて、組合員が信用組合に対してなす出資金および預金はその組合員が利用(借受)する資金源であると同時にまた、他の組合員が利用(借受)する資金源でもあるのである。
それゆえに、信用組合の資金を利用(借受)している組合員といえども、他方において信用組合に預金をなし、他の組合員の利用に供することは、相互扶助の精神に基づく相互金融団体たる信用組合の特質に照らして当然のことであり、信用組合の組合員としての一種の義務の履行であるといわなければならない。
そして、本件貸付に当たり控訴人が被控訴人から受入れた前記出資金、定期預金、定期積金は、当時信用組合業界において一般的に行われていた慣習に照らし、不当なものではなかつた。
(二) 信用組合の特質の二は、組合員が組合事業の所有者であり、組合事業の経営者であり、同時に組合事業の利用者であるということである。このことは中協法第一条、第五条第一項第四号、第二項前段、第九条の八第一項、第三五条第四項および第五九条第二項などの各規定の趣旨よりして明白である。
組合金融、協同金融、相互金融の事業は組合員が多数になるにともない、その複雑性を調整し、円滑化し、合理化する必要が生ずる。そこで、中協法は各組合員が相互扶助の精神に基づき協同して信用事業すなわち金融事業を行うために必要な組織(信用組合の組織)を定め、法定の組織を具備した組合に法人格を付与し、これを独立の権利義務の主体たらしめ、もつて組合の内部関係および外部関係を各々簡便に決済、処理せしめんとしたのである。
したがつて、信用組合は法人格が付与され、それ自体独立の権利義務主体として取り扱われてはいるけれども、それはあくまでも各組合員が相互扶助の精神に基づき協同して信用事業(金融事業)を行うための必要な法的手段であり、「組合員が協同して行う事業が、法人たる組合の事業の形において行われている」(水産庁協同組合課監修・水産協同組合法解説六三頁)ものである。
このように、各組合員が事業者であると同時に組合事業の利用者であること、すなわち利用者と事業者の同一性こそ信用組合特有の事柄である。いうなれば、信用組合自体が信用事業を行うのではなく、各組合員のなす信用事業を分担代行しているものである。
しかして、組合を組織し、これを運営維持して行くためには経費を必要とする。ところで、信用組合は営利団体ではないから、実費主義を原則とし、これを組合員から徴収する必要があるが、組合員が組合の事業、施設を利用する全ての実費を、その都度一々これを計算して徴収することは不可能に近い困難なことである。そこで、信用組合は利用者たる組合員から利息名義をもつて実費の一部概算払を受けるのである。そして、実費を貰いすぎ、剰余が出れば、各組合員の利用分量に応じて割戻されるのである(中協法第五条第一項第四号、第九条、第五九条第二項、法文に配当という文言が用いられているが、その法律上の性質は払戻しまたは割戻しである。なお、消費生活協同組合法第五二条参照)。
したがつて本件において、控訴人が本件貸付金のうちから、利息金のほか出資金、定期預金、定期積金等を受取つたとしても、本件貸付金のうち右出資金等に相当する金員分についての利息相当分を控訴人自体が利得し、組合員たる被控訴人に損失を蒙らしめたということにはならないのである。
(三) 信用組合の特質の三は、組合と組合員との関係は精神的にも経済的にも一体であり、対立的、競争的関係ではないということである。
元来、組合は組合員を包摂する総合概念である。各組合員が相互扶助の精神を基調として結合した人的、精神的団体が信用組合なのであり、組合と組合員とは精神的にも経済的にも有機的、一体的関係を有する。いい換えれば、組合の事業の範囲内において、組合と組合員との関係は対立的、競争的な強弱、優劣的な観念を容れる余地がないのである。強いて両者の関係を強弱優劣的観念をもつて目するならば、信用組合の助成法人性からいつてむしろ組合員が主体的立場に立ち、組合が従属的立場に立つとさえいうことができるのである。
(四) 以上要するに、本件において、控訴人が、経済的優者の地位を利用して、経済的弱者たる被控訴人に対し不利益な条件で取引したという被控訴人の主張は全く当たらないのである。
六、さらに、信用組合の行為に私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下独禁法という)第二四条但書の規定の適用を問題とするに当たつては、信用組合の経済的行為が対内的経済行為と対外的経済行為とに区別されることに留意すべきである。ここに、対内的経済行為とは組合と組合員との間の取引行為(組合員による組合の事業、施設の利用)であり、対外的経済行為とは組合と第三者(組合員以外の者)との間の取引行為である。
独禁法第二四条但書により適用除外される同法の規定からはずされることとなる「不公正な取引方法を用いる場合」の不公正な取引方法とは、「公正な競争を阻害するおそれのあるもの」(同法第二条第七項)をいうところ、その「公正な競争」とは自由に開放されている一般的取引市場における公正な経済競争秩序を指称する観念であり、そのなかには特定の競争者に対して用いられる不公正な競争手段も含んでいる(同法第二条第七項第三号、第六号の競争者または競争関係にある者)が、それらが不公正な取引方法とされるのも、相手方の私的経済利益のためではなく、公正な競争秩序一般を保護するためである。そのようにして、右「不公正な取引方法」というのは市場取引における競争秩序に関する場合のことなのであり、これに関係がなければ、たとえ他の観点から不公正とみられる取引方法であつても、独禁法にいう「不公正な取引方法」には該当しないのである。
しかして、前記信用組合の内部的経済行為である、組合員が組合の事業施設を利用するというような関係は、一般的、開放的、競争的な市場経済界における関係ではなく、特定の組合員によつて構成された限定的、閉鎖的な組合内部の相互扶助関係であるから、これにつき独禁法第二四条但書の規定(後段の「一定の取引分野における競争な実質的に制限することにより不当に対価を引き上げることになる場合」が生じえないことは明らかである)が適用される余地はないのである。
したがつて、控訴人の組合員である被控訴人に対する本件貸付が右規定にいわゆる不公正な取引方法に該当することはないのである。
七、仮に、本件貸付について独禁法第二四条但書の規定の適用があるとしても、先に述べたところよりして、同法第二条第七項に基づく昭和二八年公正取引委員会告示第一一号(以下告示第一一号という)の一〇に該当するものではない。
なお、独禁法上の不公正な取引方法の適用基準である「不当性」の内容を判断するに当たつては、いわゆる市民法的解釈原理である「公序良俗」とか、「信義誠実」とかの概念を基準とすべきではなく、独禁法的視点に立つて、いわば経済法的、巨視的観点からなされなければならない。すなわち、独禁法の目的とする「国民経済における公正にして且つ自由な競争秩序の維持促進」という原理に立脚し、当事者の主体的行為を直ちに不当、違法とせず、その競争経済秩序に及ぼす客観的意味を捉えて違法性、不当性の基準とすべきである。
八、仮に、百歩を譲つて、本件貸付が告示第一一号の一〇に該当し、独禁法第一九条に違反する行為であるとしても、直ちにそれが私法上無効の行為であると解すべきではない。
本件において、控訴人および被控訴人は本件貸付当時これが独禁法に違反するというがごときは全く知らなかつたのであり、契約が履行され一定の結果が生じた後は、その法的安定を保護するため、その効力を否定することなく、同法の目的達成は、もつぱら公正取引委員会による排除措置にゆだねられるべきである。
けだし、独禁法違反とされる行為はその一つ一つを個別的に抽出して観察すれば、資本主義社会において通常、合法的行為とされるものが大部分であり、かつ独禁法においても、現行法は、それらの行為を無条件に禁止することなく、国民経済における自由競争秩序に及ぼす影響度のいかんにより、これを違法としているにすぎないからである。
九、仮に、独禁法第一九条に違反する行為を無効と解する説に立脚したとしても、本件貸付および前記本件貸付金からの控除措置と前記定期預金および定期積金とに対する担保設定とを区別して考えるべきである。本件貸付そのものはもとより、前記のように本件貸付金から定期預金等を控除した措置も、控除金についてはその全額を現実に被控訴人に交付したのと同一の経済的利益を被控訴人に対しもたらしているのであつて、なんら被控訴人の不利益となつていない。不利益といえるのは、前記定期預金および定期積金に対する担保権設定のみであり、独禁法に違反するとすればこの点だけである。被控訴人に不利益を与えない本件貸付および前記本件貸付金からの控除措置は独禁法に違反するものではなく、またそれにつきなされた担保権設定が違法、無効であるからといつてこれと運命をともにしなければならない理由は存在しないのである。
一〇、さらに、前記本件貸付金からの控除措置および前記定期預金および定期積金に対する担保権設定につき公序良俗違反ないし独禁法違反の点があつたとしても、控訴人は、本件貸付金に対する遅延損害金の割合について昭和三六年一一月一六日以降約定の日歩八銭を日歩六銭に低減したうえ、前記定期預金について昭和三七年七月三一日本件貸付金と対等額による相殺の措置を講じて、その拘束性による不利益を解消し、前記定期積金の掛金のうち、月掛金一〇万円の分については前記定期預金とともに本件貸付金および昭和三六年三月一三日になされた金一六〇万円の貸付金と対等額で相殺をなし、月掛金二万五、〇〇〇円および金一万五、〇〇〇円の分についても本件とは別口の貸付金と対等額で相殺をなし、また、前記出資金五〇万円については昭和四四年五月九日被控訴人に現実に返還しており、被控訴人はもはや本件貸付によりなんら不利益を蒙つていないものである。
ところで、法は、一般に、ある法律行為について無効な部分が存在する場合においても、これを法律の規定、慣習、条理などで補充して合理的な内容に改造し、その効力を維持するのを原則とするのである。したがつて、右のような処理がなされた以上、もはや本件貸付についてこれを無効と解すべきなんらの理由もないのである。
一一、仮に、本件貸付が無効であるとしても、本件貸付がなされた時期(昭和三五年)と、その無効主張のための本件訴提起の時期(昭和四二年八月一四日)との間が著しく離れており、そのような場合は既成事実尊重の立場、権利失効の原則の法理のうえからも無効の主張は許されないものと解すべきである。
一二、本件貸付金の現存額は次のとおりである。
(一) 本件貸付金について弁済期は昭和三八年八月三〇日、利息は元金一〇〇円につき日歩四銭、弁済期到来後の遅延損害金は元金一〇〇円につき日歩八銭と定められていたほか、(イ)被控訴人は、本件貸付金支払の方法として、借受元金を額面とし、支払期日を九〇日以内とする約束手形を控訴人宛に振出し、該約束手形を支払期日毎に書替え、元金完済までこれを継続すること、(ロ)利息の支払方法は、借入または約束手形書替の都度、借入または約束手形書替の日から該約束手形の満期日に至るまでの分を前払すること、(ハ)被控訴人は本件貸付金債務弁済のため、控訴人に対し、定期積金(月掛)をすること、(ニ)右(イ)ないし(ハ)の契約違反あるいは被控訴人が他から強制執行を受ける等の事由が一つでも発生した場合には、被控訴人は、本件貸付金債務につき期限の利益を失い、控訴人からなんらの通知催告がなくとも、直ちに残債務を完済することという特約が成立していた。
被控訴人は、右(イ)ないし(ハ)に定められたところを履行せず、これに違反したので、右(イ)、(ロ)違反の事由が発生した昭和三六年四月二五日をもつて本件貸付金の弁済期は到来した。
仮にそうでないとしても、被控訴人は同年五月頃、訴外丹葉殖産株式会社から、金銭債務の不履行により強制執行を受けたので、同月末日をもつて本件貸付金の弁済期は到来した。
(二) 本件貸付金に対する弁済期到来後の遅延損害金については、前記のように昭和三六年一一月六日以降日歩八銭を日歩四銭に低減している。
(三) 本件貸付金について前記相殺のほか、弁済あるいは競売代金等による入金があつたが、その間の計算関係は別紙「株式会社宮川に対する貸付関係計算書」のとおりである。
結局、本件貸付金債務は、元金三一七万九、七六四円(別紙計算書末尾の差引金額らん記載の金額より前記金一六〇万円の貸付元金を差引いた額)およびこれに対する昭和四〇年一〇月二三日以降の日歩六銭の割合による遅延損害金が残存しているのである。
(被控訴代理人の陳述)
控訴人の当審での新たな主張は争う。
(証拠関係)<省略>
理由
一、控訴人が中協法(中小企業等協同組合法)に基づく信用協同組合であること、控訴人と被控訴人との間に、昭和三五年一〇月三一日、控訴人から被控訴人に対し金七五〇万円を、弁済期は昭和三八年八月三〇日、利息は日歩四銭、期限後の遅延損害金は日歩八銭の各割合によることと定めて貸付けたとする内容の金銭消費貸借契約(以下本件貸付契約という)が成立したこと、同日控訴人と訴外宮川一雄、同宮川松枝、同村手敏雄、同水野覚久、同川瀬松太郎の五名との間に、右訴外人らにおいて本件貸付契約上の被控訴人の債務を連帯して保証する旨の保証契約が成立したこと、本件貸付契約および右保証契約につき公正証書が作成されたこと、本件貸付債権を担保するため、訴外宮川松枝がその所有建物に、訴外村手がその所有田畑にそれぞれ根抵当権を設定したことならびに控訴人が本件貸付金から(イ)利息として金二三万六、二五〇円、(ロ)調査その他の手数料として金一、五〇〇円、(ハ)確定日付料として金三九〇円、(ハ)公正証書作成料として金三、一九〇円、(ホ)印紙代として金九八〇円、(ヘ)抵当権設定費用として金六万円、(ト)火災保険料として金一万一、八四〇円、(チ)出資金として金五〇万円、(リ)定期積金として金一四万円、(ヌ)定期預金として金二〇〇万円および(ル)別口の手形貸付金四〇〇万円の利息として金一〇万円(以下(イ)の控除金、(ロ)の控除金などという)合計金三〇五万四、一五〇円を控除し、被控訴人に対し実際に交付したのは金四四四万五、八五〇円であることはいずれも当事者間に争いがない。
二、そこで、まず本件貸付に至る経緯をみると、成立に争いのない甲第一八号証の一、第一九号証の二、第二八号証の一(第三四号証の一に同じ、以下第二八号証の一のみを掲げる)、二、乙第二七、第五三号証の各一ないし三、弁論の全趣旨により成立の認められる甲第三六号証の三、四〇各一、二、原審証人遠藤定雄の証言により成立の認められる乙第一号証、当審証人松岡正己の証言により成立の認められる乙第四七、第四八号証と原審証人宮川一雄(第一、二回、ただし後記措信しない部分を除く)、原審および当審証人遠藤定雄、当審証人松岡正己の各証言、当審における被控訴人代表者宮川一雄本人尋問の結果(ただし後記措信しない部分を除く)ならびに弁論の全趣旨を綜合すれば、次のとおり認められる。
(一) 控訴人は前示のように中協法に基づき、「中小規模の事業者、勤労者その他の協同事業組織によりこれらの者に必要な金融事業を行うことを目的」として設立されたもので、岐阜市、岐阜県稲葉郡および羽島郡一円を組合の各地区とし、該各地区内に住所または居所を有する者、該各地区内において事業を行う小規模の事業者等を組合員の有資格者とする。
(二) 控訴人の組合員は出資(一口五〇〇円)を義務づけられ、総会での議決権、前記各地区ごとに選出の総代の選挙権を有する。
(三) 被控訴人は本件貸付当時岐阜市清住町三丁目一一番地に本店を置き、提燈、屏風を製造販売していた零細ないわゆる個人会社である。当時その代表者代表取締役には訴外宮川松枝が就任していたが、実際被控訴人の経営の衝に当たつていたのは右訴外人の夫である訴外宮川一雄であつた。同人は被控訴人以外の会社、団体の設立運営にも関与し、銀行等の金融機関との取引経験には事欠かなかつた。控訴人との取引もすべて訴外宮川一雄が被控訴人を代理してこれに当たつた。
(四) 被控訴人は昭和三五年七月一一日控訴人から金五〇万円の手形貸付を受けた(以下第一回貸付という)が、その際金三万五、〇〇〇円の出資をして控訴人の組合員となつた。二回目は同年八月八日になされた金三五万円の手形貸付(以下第二回貸付という)であり、このときは金二万円の出資がなされている。第一、第二回貸付の場合とも、右貸付金のほか第一回貸付のときは金三〇万円、第二回貸付のときは金三五万円の貸付がなされているが、それはいずれも後述のむつみ定期預金に充てられたものである。なお、貸付金から控除された定期預金額は第一回貸付のときが金五万円、第二回貸付のときが金八万円、定期積金は第二回貸付のときはなされず、第一回貸付のとき一か月分の掛金二万五、〇〇〇円が貸付金から控除されている。
(五) 同年一〇月一三日被控訴人は控訴人に対し、運転資金、債務返済資金等に充てるため、保証人に訴外宮川松枝、同宮川一雄、同川瀬松太郎および同水野覚久をたて、担保物件として岐阜市清住町三丁目一一番宅地二二五・九一平方メートル(以下清住町の土地という)およびその地上の木造瓦葺二階建事務所床面積一階六八・二九平方メートル、二階二〇・七二平方メートルおよび付属建物(以下清住町の建物という)を提供するということで金四五〇万円の融資申込みをなしたところ、清住町の建物は訴外宮川松枝の所有であつたが、土地は共有であつたため、控訴人において難色を示し、取り止めとなつた。
その後、被控訴人から控訴人に対し、保証人に訴外村手敏雄を加え、清住町の土地の代りに同人所有の愛知県一宮市丹陽町多加木字南畔七一九番畑一反一畝二八歩ほか同町多加木地内の田四筆合計一反二七歩(以下多加木地内の土地という)を担保に供するという条件で、金七五〇万円の融資申込みがなされた。
第一回、第二回貸付金ともその返済状況は順調でなく、控訴人は、被控訴人の信用状態に懸念を抱かないわけではなかつたが、被控訴人が東京オリンピツクおよび国民体育大会を当てこんで製造する提燈の受注を取つたということ、訴外村手が信用できるということで、本件貸付を行うことを決定した。
(六) なお、被控訴人は、当時銀行、信用金庫その他に対し総額二、〇〇〇万円以上の負債を有していた。
以上の事実が認められ、原審証人宮川一雄の証言(第一回)および当審における被控訴人代表者宮川一雄本人尋問の結果中これに反する部分は前掲各証拠と対比して信用できず、他にこれを左右するに足る証拠はない。
三、次に、前掲甲第一八号証の一、第一九号証の二、第二八号証の一、二、第三六号証の三、四の各一、二、乙第一号証、成立に争いのない甲第一号証の一、二、第二号証の一(第一一号証の三、第一三号証の三と同一)、二(第一三号証の三と同一)、第一三号証の四、五、第一八号証の二、第二二号証の二、第三〇号証、第三六号証の五、六、乙第七、第一八号証、弁論の全趣旨により成立の認められる甲第四号証の一、当審証人遠藤定雄の証言により成立の認められる甲第一六号証の一ないし三(ただし被控訴人代表者記入部分を除く)、当審証人川崎昭夫の証言(第二回)により成立の認められる乙第五五号証と原審証人宮川一雄(第一、二回、ただし後記措信しない部分を除く)、原審および当審証人遠藤定雄(ただし後記措信しない部分を除く)、当審証人川崎昭夫(第一回)、同横山敬一、同松岡正己の各証言、当審における被控訴人代表者宮川一雄本人尋問の結果(ただし後記措信しない部分を除く)ならびに弁論の全趣旨を綜合すれば、次の事実が認められる。
(一) 控訴人および被控訴人は、昭和三五年一〇月三一日、その間の手形貸付等の継続的取引に関する共通の基本的事項を「取引約定書」(甲第一号証の二)により取り極め(以下取引約定という)、それに基づき本件貸付契約を締結した。それとともに、控訴人は同日、訴外宮川松枝および同村手敏雄との間で、被控訴人が取引約定に基づき控訴人に対し負担する一切の債務を担保するため、元本極度額を金六〇〇万円として、訴外松枝において清住町の建物、訴外村手において多加木地内の土地につき根抵当権を設定するにつき、その内容を「根抵当権設定契約書」(乙第七号証)により取り極めた(以下基本担保契約という。本件貸付債権担保のため、訴外松枝がその所有建物につき、訴外村手がその所有田畑につき抵当権を設定したことは前示のとおり当事者間に争いがない)。なお、本件貸付契約上貸付金に対する利息の割合は日歩四銭と定められていたことは前示のとおりであるが、実際には、後述のとおり定期預金を担保として徴した関係上、控訴人においてこれを日歩三銭五厘の割合に軽減した。
(二) (イ)の控除金は本件貸付金七五〇万円に対する前示貸付日から昭和三六年一月二八日までの九〇日間の日歩三銭五厘の割合による利息である。(ロ)の控除金は控訴人のなした前示各保証人の資産信用調査に要した費用で、取引約定に被控訴人の負担すべきものが定められていた。(ハ)ないし(ホ)の各控除金は本件貸付契約締結に直接かつ現実に必要であつた費用で、同じく取引約定により被控訴人の負担すべきものとなつていた。(ヘ)の控除金は前示根抵当権設定登記手続費用で本件貸付契約費用に属するが、基本担保契約(債務者である被控訴人も締結当事者の一人となつている)により被控訴人の負担すべきものとなつていた。(ト)の控除金は基本担保契約により訴外宮川松枝において清住町の建物について締結した火災保険契約の保険料の一か年分で、被控訴人において立替え払いすることとなつていた。(チ)の控除金は控訴人の組合員としての一、〇〇〇口の出資金であるが、控訴人は、控訴人から貸付を受けようとする組合員において貸付額の八ないし一〇パーセントの出資を有することを貸付の基準としていた。(リ)の控除金は、本件貸付に当たつて被控訴人が控訴人との間で締結したいずれも期間三年、契約額金一四四万円(月掛金四万円)および金二一六万円(月掛金六万円)の二口合計金三六〇万円の定期積金(以下本件定期積金という)の一か月分の掛金合計金一〇万円ならびに本件貸付前に締結してあつた契約額金三六万円(月掛金一万五、〇〇〇円)および金六〇万円(月掛金二万五、〇〇〇円)の二口の昭和三五年一〇月分の掛金合計金四万円を併せたものである。控訴人は、金員貸付の場合、その返済の便に資するため、日掛または月掛による積立方式の預金である定期積金契約を貸付を受ける者との間に締結し、該預金債権につき担保権の設定を受けることを前同様貸付の基準としており、本件においても右四口の定期積金につき本件貸付金担保のための質権設定がなされた。(ヌ)の控除金は、本件貸付金債権担保のため、控訴人が、貸付金の二〇ないし三〇パーセント程度という貸付基準に則つて、被控訴人に対し要求した定期預金(以下本件定期預金という)で、取引約定に基づく控訴人の被控訴人に対する債権担保のためこれに質権が設定された。なお、本件定期預金の利率は年五分一厘であつた。(ル)の控除金は控訴人から被控訴人に対し、本件貸付と同時に貸付けられた手形貸付金四〇〇万円に対する昭和三五年一〇月三一日から昭和三六年三月四日までの一二五日間の日歩二銭の割合による利息金である。右金四〇〇万円の貸付金は即時被控訴人の控訴人に対するむつみ定期預金四、〇〇〇口(一口一、〇〇〇円、以下本件むつみ定期預金という)に充てられたもので、本件むつみ定期預金を担保とするいわゆる預金担保貸付である。むつみ定期預金というのは「全国信用協同組合連合会第〇回むつみ定期預金」を正式の名称とする割増金付定期預金で、契約期間は六か月、利息は年三分六厘の割合、割増金は玉の組(他に金および銀の組がある)の場合、抽選により特賞金三〇万円(一万口を一組とする一〇組につき一本)、一等金一万円から五等金四〇円まで(特賞を含め一〇組につき総額金七四万円)となつており、利息金は契約期間満了日に支払われるが、割増金の抽選および支払は契約期間の途中でなされる。本件むつみ定期預金は第二六回の玉の組に属し、抽選の結果、金二万四、〇〇〇円の割増金が昭和三五年一二月一九日および同月二一日の二回に訴外宮川松枝の控訴人における預金口座に振替えて支払われた。
(三) 被控訴人は、訴外宮川松枝が他の共有者の有する清住町の土地の持分を買受ける資金に充てるため、昭和三六年三月一三日控訴人から金一六〇万円の手形貸付を受け(以下最終貸付という)、同日訴外松枝において、右持分を買受けるとともに、取引約定に基づく控訴人の被控訴人に対する債権担保のため、清住町の土地につき元本極度額を金五〇〇万円とする根抵当権を設定した。最終貸付金からも(イ)これに対する同日から同年五月一一日までの六〇日間の日歩三銭五厘の割合による利息金三万三、〇〇〇円、(ロ)諸費用金一万九、一六〇円、(ハ)定期預金一〇万円合計金一五万二、七六〇円がそれぞれ控除された。しかして、右定期預金は取引約定に基づく控訴人の債権担保に供された。なお、最終貸付の際はむつみ定期預金はなされなかつた。
以上のとおり認められ、原審証人宮川一雄(第一、二回)、当審証人遠藤定雄の各証言、当審における被控訴人代表者宮川一雄本人尋問の結果中これに反する部分は信用できず、他にこれを左右するに足る証拠はない。なお、前掲甲第一九号証の二中定期積金らんに金一〇万円と記入されているのは原審証人宮川一雄の証言により定期預金一〇万円とすべきものを誤記したものと認められる。
四、そして、成立に争いのない甲第二三号証の三ないし五、第二七号証の一、乙第五号証の一、第一一、第一三号証、第二七号証の四、当審証人遠藤定雄の証言により成立の認められる乙第九号証の一ないし三、原審および当審証人遠藤定雄、当審証人松岡正己の各証言によれば、控訴人が本件貸付金債権担保のため徴した前示各抵当物件の価額、前示各保証人の資産状態につき、次のとおりのことが認められる。
(一) 訴外宮川松枝所有の清住町の土地建物は昭和三六年一一月九月競売に付され、その結果、土地が金二五一万二、〇〇〇円、建物が金二六万〇、八〇〇円で競落された。なお、清住町の建物は昭和三六年九月頃大改造されている。
(二) 訴外村手敏雄所有の多加木地内の土地の価額は、昭和三六年一一月一〇日現在で合計金五三八万九、二〇〇円であつた。
(三) 本件貸付当時、訴外宮川一雄は無資産であり、また訴外宮川松枝は清住町の土地(持分)建物以外に資産といいうるものを有しなかつた。
(四) 本件貸付当時、訴外村手敏雄は多加木地内の土地以外には一宮市大和町妙興寺字油田一二番畑一畝一歩ほか油田地内に田畑四筆合計三畝二六歩を所有していたが、右油田地内の田畑の昭和三六年一〇月三一日当時の価額は合計金九三万三、〇〇〇円であつた。
(五) 本件貸付当時、訴外水野覚久は、岐阜県稲葉郡蘇原町伊吹字寺島五二七番宅地六〇八・二六平方メートル、その地上の床面積一三三・八八平方メートルの居宅等ほか伊吹地内の田畑四筆合計二反九畝二七歩を所有していたが、それらの昭和三七年一月三〇日当時の価額は合計金一二四万九、七〇〇円であつた。なお、昭和三八年七月一五日訴外水野の所有動産が競売に付されたが、その価額は金二〇万円であつた。
(六) 同じく本件貸付当時、訴外川瀬松太郎は、大垣市南若森町字柳海道八五四番一宅地一〇・三五平方メートル、同所八五六番一宅地四五二・八九平方メートルならびに同所八四四番地一、八五六番地所在の木造瓦葺二階建居宅床面積一階四一・三〇平方メートル、二階二八・〇〇平方メートルおよび付属建物を所有していたが、右八五六番一の宅地および建物については訴外岐阜市信用保証協会の被控訴人に対する求償債権を元本極度額金一〇〇万円の範囲で担保する根抵当権が設定されていた。しかして、右不動産の昭和四四年における固定資産税評価額合計は金七八万六、六七八円である。
以上のとおり認められる。これに反する成立に争いのない甲第二四号証の一、二、原審証人宮川一雄の証言により成立の認められる同号証の三、四、甲第二五号証の二、第二六号証の一の各記載は前掲各証拠と対比して採用できず、また右証言中訴外村手敏雄の資産が前認定以上のものであつた旨の供述は、成立に争いのない乙第五二号証、当審証人遠藤定雄の証言に照らし信用できず、他に右認定を左右し、または前示各保証人が右認定以上の資産を有することを認めるに足る証拠はない。
五、なお、前示のように第一、第二回貸付、本件貸付といずれもその貸付に際し、むつみ定期預金が行われているが、それはいずれも控訴人からの貸付金によつてなされているものであるところ、成立に争いのない甲第七、第八号証の各二、弁論の全趣旨により成立の認められる甲第四、第七、第八号証の各一によれば、控訴人は、本件貸付を行つた頃、一般に貸付の際、別口の貸付を行ない該貸付金をもつてむつみ定期預金を受けていたと認められることおよび第一、第二回貸付、本件貸付各金額と、各貸付の際なされた前示各むつみ定期預金額との比率、前示特賞の当選率等に照らせば、被控訴人が射幸心から自発的に本件むつみ定期預金を行つた趣旨の当審証人遠藤定雄の供述は到底信用できず、右事実に徴すれば、本件むつみ定期預金は、被控訴人において、これをなさなかつた場合貸付額その他控訴人との取引上不利益を蒙るおそれがあつたため、事実上なさざるをえなかつたものであることが推認される。
前示のように最終貸付の際は、むつみ定期預金がなされていないが、それは前示本件貸付に至るまでの経緯、最終貸付金の使途および担保設定関係等を綜合すれば、最終貸付が本件貸付と一連のものとして行われたためであると推認され(当審において被控訴人代表者宮川一雄本人はこれと全く異つた趣旨の供述をするが信用できない)、前認定の妨げとならない。
六、叙上認定の諸事実に基づいて、本件貸付が被控訴人主張のように独禁法または公序良俗に違反するものかどうか検討することとする。
まず、担保関係であるが、控訴人が本件貸付金債権元本金七五〇万円の担保として契約額金三六〇万円の本件定期積金に質権の設定を受け、また、本件貸付金債権も含まれる控訴人の被控訴人に対する現在および将来の債権の担保として、本件定期預金二〇〇万円に質権の設定を受け、価額約金二六万円の清住町の建物、価額約金五四〇万円の多加木地内の土地にそれぞれ元本極度額金六〇〇万円の根抵当権の設定を受けたことは、債権額と担保物件の価額との均衡を失し、債権確保の目的をこえるものとはいいえない。控訴人は取引約定に基づく債権につき、本件貸付後清住町の土地も担保とすることを要求し、これに元本極度額金五〇〇万円の根抵当権の設定を受けているが、清住町の土地は清住町の建物敷地であり、その価額は約金二五〇万円であることおよび控訴人から被控訴人に対し新たに金一六〇万円の貸付が行われていることに照らせば、たとえ、右清住町の土地についての根抵当権の設定が、本件貸付当時から当事者において予定されていたものであるとしても、右結論に影響しないというべきである。
また、取引約定に基づく控訴人の債権担保のため、控訴人が訴外宮川松枝ほか四名と連帯保証契約を締結したのは、右訴外人らの資力が前認定のようであることから、訴外宮川松枝、同宮川一雄についてはその資産により債権の価値を保全する点にではなく、被控訴人の名義上または実質上の経営者として被控訴人と同一の責任を負わせることにより弁済の努力を期待する点に実際上の目的があり、その余の保証人らについてもそれらの保証人に対する責任追求がなされることのないよう訴外宮川一雄らが努力することの間接的効果に重点があつたと推認されるが、控訴人において前示物的担保のほかに本件における程度の保証人を付することを要求し、危険の分散を図つたとしても、金融取引上決して不相当といいうるものではない。
訴外宮川松枝、同宮川一雄を除くその余の前示保証人らが控訴人との間の保証契約の締結を余儀なくされるような事情があつたことを認めるに足る証拠はなく、前掲乙第二七号証の四、成立に争いのない甲第一一号証の五ないし一〇(ただし、六ないし八につきらん外の記載を除く)によれば、結局前示物的担保権の実行によつては本件貸付金債権の回収は全部できず、前示各保証人に対する責任の追求が行われたことが認められる。
要するに、本件貸付に関して控訴人が受けた担保の付与、設定は、少なくともそれ自体においては金融取引上正常な範囲を出なかつたといわなければならない。
七、次に、本件貸付金から種々の金員を控除した関係等を検討する。
(一) (イ)ないし(ト)の各控除金はその性質、額からしていずれも本件貸付をして正常な取引たることを失わせるに至らしめるものとはいいえない。
(二) (チ)の控除金であるが、控訴人が相互扶助の精神に基づき協同して事業を行う信用組合で、その活動の基盤たる資金の殆んどを組合員の出資によらざるをえないものである以上、控訴人が組合員に対し金員を貸付けるに当たり、その額すなわち利用分量に応じ、相当な出資を要求するのは不当ではなく、むしろ当然のことというべきである。
(チ)の控除金すなわち金五〇万円の出資金が本件貸付額の約六・六パーセント、後記の本件実質貸付金五三六万円を基準にして約九・五パーセント、第一回貸付から本件貸付までの貸付額の合計と出資額の合計との対比でも後者の約六・六パーセントとなることは算数上明らかであるが、当審証人横山敬一の証言により認められる、全国の信用組合における貸付を受ける組合員の出資額の貸付額に対する標準的な比率が五ないし一〇パーセントであることよりして、被控訴人の出資額が不相当に多いものとは認め難い。
(三) (リ)の控除金のうち本件定期積金以外の二口の定期積金がたとえ本件貸付前に締結されたものであるとしても、本件貸付金債権担保のため質権が設定され、さらに後記のようにその掛金の支払遅滞が本件貸付金につき附された期限の利益を喪失させる事由となつていることよりすれば、これは本件定期積金と同様の評価を受けるべきである。
右本件定期積金等もいわゆる拘束預金に包含されることとなるが、その締結の目的は毎月一定額宛積立て本件貸付金の弁済資金とすることにあるのであるから、割賦弁済契約と大差はないといえなくはない。しかし、割賦弁済にあつては貸付元本の逓減により支払利息が減少するのに比し、定期積金にあつては債務者においてその利益を受けえないこととなる。もつとも、原審証人遠藤定雄の証言によれば、本件定期積金は、その契約金額の三分の一以上積立てられた後はそれに対し利息が附されることとなつていることが認められるが、該利息が右不利益を完全に補うに足るものでありえないことは経験則上明らかである。
(四) (ヌ)の控除金はいわゆる拘束預金の典型的なものである。
(五) ところで、本件むつみ定期預金およびそのためになされた金四〇〇万円の貸付は、結局本件貸付にとつて事実上の附帯条件となつていたのであるから、本件において貸付と預金の両建関係の相当性を判断するに当たつてはこれをも含めてなされなければならないというべきである。
その意味では、(ル)の控除金自体には問題はないといいうる。
しかしながら、本件むつみ定期預金関係を入れると、貸付額金一、一五〇万円に対し拘束預金は金六一四万円、その比率は約五三・三パーセントに上る。本件貸付時までの全貸付を通してみても、貸付総額金一、三〇〇万円に対し拘束預金総額金六九二万円で、比率は約五三・二パーセント、最終の段階で貸付が金一六〇万円、預金が金一〇万円それぞれ増加して拘束預金の比率は約四八パーセントとなること明らかである。
(六) 引き出しの制限される両建預金により貸付債務者の蒙る不利益は名目的貸付額の引き上げに伴う契約締結費用の増大という点もあるが、それは軽微なものに止まり、問題とすべきは貸付利息が実質的に増大する点にあると認められる。
貸付額のうち両建預金に充てられる部分は貸付債務者にとつて実質的には貸付を受けないと等しく、これを控除した金員の貸付を受ければ借受の経済的目的は達せられるにもかかわらず、両建預金部分をも含めて貸付を受けるときは、貸付利息として、本来必要な金員の貸付を受けた場合に比し、両建預金部分の貸付利息とこれを下回る預金利息との差額を余分に負担することとなる。
本件貸付における実質的貸付額(以下本件実質貸付額という)は金五三六万円というべきであり、実質的な貸付利率を試算(厳密に計算するには例えば貸付利息は前払であるのに預金利息は後払となつている点の考慮あるいは本件むつみ定期預金の実質的利息をどう決定するかなどの問題がある)するに次のようになる。
(イ) 本件貸付金七五〇万円に対する一日分の利息額金二、六二五円に本件むつみ定期預金充当の貸付金四〇〇万円に対する一日分の利息額金八〇〇円を合計すると金三、四二五円。
(ロ) 本件定期預金二〇〇万円に対する年五分一厘(日歩一銭三厘九毛七糸)の割合による利息の一日分が金二七九円、本件むつみ定期預金に対する年三分六厘(日歩九厘八毛六糸)の割合による利息の一日分金三九四円およびその実質は利息にほかならないというべき前示むつみ定期預金の割増金総額金七四万円を各口に平分するとともに契約期間で除した場合の一日分(ただし四、〇〇〇口)金一六三円を合計すると金八三六円。
(ハ) (イ)の金三、四二五円から(ロ)の金八三六円を差引くと金二、五八九円。
(ニ) 本件実質貸付額金五三六万円に対する(ハ)の金二、五八九円は日歩四銭八厘三毛、年一割七分六厘に相当する。
右は利息制限法所定の最高利率と比較するとき二分六厘上回ることとなる。
なお、最終貸付時において同様の計算を行えば、(イ)の金三、四二五円に最終貸付金一六〇万円に対する一日分の利息額金五六〇円を加えたものから、(ロ)の金八三六円に最終貸付金から控除された前示定期預金一〇万円の一日分の利息額金一四円を加えたものを差引いた金三、一三五円が実質利息、最終貸付により金一五〇万円増加した実質貸付額金六八六万円に対する右実質利息の割合が日歩にして四銭五厘七毛、年にして一割六分七厘となり、利息制限法所定の制限利率を上回ることにおいて変りない。
八、そのように、法律に基づいて設立された金融機関が貸付をなすに当たり、その条件とした拘束性預金が当該貸付額の五〇パーセント前後に達し、貸付債務者の負担する利息が実質的には利息制限法所定の制限利率を超えるものとなるような場合は、特段の事情のない限り、右条件は正常な商慣習に照らして貸付債務者に不当に不利益な条件というべきである。
本件において、控訴人はその主張するように助成法人としての特質を有し、当審証人横山敬一、同松岡正己の各証言によれば、本件貸付当時は金融がひつ迫していた時代に当たると認められ、また被控訴人の信用状態が良好でなかつたことは前示のとおりであるが、反面、本件貸付金からは前示金五〇万円の出資金が控除され、また当時としてはそれ相応の物的、人的担保が徴されたのであつてみれば、右控訴人の特殊な性格等をもつて右にいう特段の事情に該当するということはできない。その他、本件貸付における前示両建関係を相当なものとする事情を認めるに足る証拠はない。
そうして、前示本件貸付に至る経緯に照らせば、控訴人は被控訴人に対し取引上優越した地位にあることを利用して、前示のような条件で本件貸付をなしたことが認められ、これを左右するに足る証拠はないから、結局、本件貸付は独禁法第二条第七項の規定に基づく告示第一一号の一〇に該当し、同法第一九条に違反するものといわなければならない。
控訴人は、控訴人が相互扶助の精神に基づき設立されたいわゆる助成組合であり、控訴人とその組合員である被控訴人とは法人格を異にするが、実質的には被控訴人ほか各組合員の行うべき事業を控訴人において代行しているにすぎず、同一体であるから、その間に対立競争的関係はなく、強弱優劣の観念を容れる余地はない旨主張する。しかし、そのようなことは理念としていいうることであつて、現実の問題として被控訴人ほか個々の組合員と控訴人ないし組合員全体の利害がつねに一致するとは限らないことはいうまでもない。そして、弁論の全趣旨によれば、控訴人の運営に直接関与することがないと認められる被控訴人が組合員として一個の議決権および総代の選挙権を有するというのみでは、被控訴人において控訴人と対等の取引能力があるといいうるものではない。したがつて、控訴人の右主張は採用できない。
また、控訴人は営利を目的とするものではなく、貸付利息は実質は控訴人運営の費用にほかならないとしても、そのことから直ちに貸付利息についての法的規制を免れ、あるいはいかに高率の利息であつてもこれを組合員から徴収することが許されるとは解しえない。現に、金融機関の金利について規制することを目的とする臨時金利調整法第一条第一項には同法の適用を受ける金融機関の一つとして信用組合を掲げている(なお、前掲乙第一号証によれば、控訴人においては、定款上、剰余金の分配は出資額に応じてなされるだけであることが認められる)。
さらに、控訴人は、告示第一一号の一〇の行為は独禁法第二条第七項柱書に明示されているように公正な競争を阻害するおそれがあるもの、すなわち自由に開放された一般的取引市場における公正な経済競争秩序に関するものでなければならないところ、本件貸付は特定の組合員によつて構成された限定的、閉鎖的な信用組合である控訴人と組合員である被控訴人との間の取引行為であり、組合内部の相互扶助関係にほかならないから、これに告示第一一号を適用する余地がない旨主張する。なるほど、独禁法第二条第七項は、同法における不公正な取引方法を、同項各号に該当する行為であつて、「公正な競争を阻害するおそれのあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの」と規定するが、同項五号の「自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること」は直接市場における競争秩序に影響を及ぼすことはないものであつて、同法がそれに該当する一定の行為を不公正な取引方法として規制の対象としたのは、むしろそれ自体公正な競争阻害のおそれがあるものとしたものと解すべきである。したがつて、本件貸付が信用組合の当該組合員に対する事業目的内の行為であるということから、本件貸付は右五号該当行為として指定されたものと解される告示第一一号の一〇の適用外にあるという控訴人の右主張は理由がない。
九、しかしながら、独禁法第一九条に違反する行為であるからといつて直ちにその私法的効力が否定されると解するのは相当でないというべきである。同条に違反する行為の効力は同条の禁止する不公正な取引の具体的型である告示第一一号の一ないし一二のそれぞれにつきその趣旨および違反行為の右法規との具体的関り方によつて決すべきである。これを告示第一一号の一〇についてみるに、同一〇は取引条件が相手方に不当に不利益なものであることをその要件の一つとしているが、右にいう取引条件は取引の本質的構成部分に関するもののほか附帯条件あるいは事実上の条件をも含むものと解され、一方不当という概念もかなり幅のあるものであつてみれば、等しく告示第一一号の一〇に該当する行為といつても、その違法性の程度には相当の開きを生ずることが明らかであるから、その効力を一律に扱うのは相当でなく、その違法の程度の軽いものは、私法上は有効としつつ独禁法の規定する行政措置に委ねても右法規の目的は充分達せられると解すべきである。
しかして、本件貸付の独禁法第一九条違反の程度は、前述した本件貸付およびその条件の各性質態様に照らせば、いまだ軽いものというべきであるから、その余の点につき判断を進めるまでもなく、右違反の点によつては本件貸付を無効ということはできない。
一〇、最後に、本件貸付が暴利行為として民法第九〇条により無効とされるべきものであるかどうかの点であるが前述したところよりして、本件貸付が告示第一一号の一〇にいう「不当に不利益な条件で取引」したことに該当するということは決して本件貸付が暴利行為と目しうることを意味するものでないことはいうまでもなく、また、前示のように被控訴人が控訴人以外にもかなりの額の債務を負つていたとしても、実際に被控訴人を代理して本件貸付契約締結に当たつた訴外宮川一雄において金融取引の経験に富み、控訴人において被控訴人の無思慮、窮迫に乗じたことの窺えない本件において、本件貸付が公序良俗に反することはないものというべきである。
一一、そうすると、本件消費貸借は有効というべきであるから、現存額について検討する。
前掲甲第一号証の一によれば、本件貸付契約において、被控訴人が本件定期積金を一回以上遅怠したときは、被控訴人は本件貸付債務につき期限の利息を失い控訴人からのなんらの通知催告を要せず直ちに残債務を完済することと約定されていたことが認められ、これに反する証拠はないところ、被控訴人が本件貸付の際以外に本件定期積金の掛金を控訴人に支払つたことを認めるに足る証拠はないから、控訴人主張の昭和三六年四月二五日までには被控訴人は前示本件貸付契約上の期限の利益を喪失したものといわなければならない。
そして、前掲甲第一一号証の五ないし一〇(六ないし八につきらん外の記載を除く)、当審証人川崎昭夫の証言(第一回)によれば、控訴人は被控訴人に対し同年五月一二日以降本件貸付金に対する遅延損害金のうち日歩六銭の割合により算出した部分を超えるものを放棄する旨その頃意思表示したこと、本件貸付金および最終貸付金の元利ならびに本件貸付金の弁済として控訴人が昭和四〇年一〇月二二日までに受領した金員が別紙「株式会社宮川に対する貸付関係計算書」記載のとおりであることが認定、計算できる。
結局、本件貸付契約上の被控訴人の債務は、右計算書末尾記載の差引金額金四七七万九、七六四円から最終貸付金一六〇万円を差引いた元本金三一七万九、七六四円およびこれに対する昭和四〇年一〇月二三日から完済まで金一〇〇円につき一日六銭の割合による遅延損害金が存在し、これを超えては存在しないといわなければならない。
一二、そのようにして、被控訴人の請求は前示範囲内において理由があるのでこれを認容すべきであるが、その余は失当として棄却すべきである。
よつて、これと一部趣旨を異にする原判決は維持できないから、これを変更することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九六条、第八九条、第九二条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 布谷憲治 福田健次 豊島利夫)
別紙 株式会社宮川に対する貸付関係計算書<省略>